生きていれば、ほかにも楽しいことと出会えたかもしれないのに……、なんていうのは、簡単だ。

サッカーが好き、でも生き甲斐にするほどの熱さではなかった俺の、無神経な言い分なのかもしれない。



けど、きっと世の中にはアレックスのような人がたくさんいるのだろう。

この広い世界で、スポーツに限らず、生き甲斐を失い絶望する人が、きっと。



そんな人に、なにかできることはないだろうか。

一度失った可能性を新たな希望に変えられるような、そんな人間になりたい。

そう考えた時、初めて自分の『夢』と出会った。



『……じいちゃん。俺さ、スポーツトレーナーになりたい。だから、大学に行こうと思うんだけど』



人のサポートをするなら、福祉や医療を始めいろんな職業がある。

けど俺はその中でも、かつて自分を夢中にさせてくれたアレックスのような人を支えたいという気持ちから、スポーツトレーナーを選んだ。



その夢を伝えた時、じいちゃんは笑って喜んでくれた。

『新太なら絶対叶えられる』、そう言って背中を押してくれた。



幸い、そういう目標に合った学科、体育学部のある大学が、近くの大学にあった。成績的にも充分いける範囲で、通学もバイクでいける。

さすがに大学の学費は自分で奨学金を申し込んで、あとはバイトで賄うと決めた。



大学に通って就職を決めて、そしたらやっとじいちゃんに、『ありがとう』という気持ちを行動でも返せる。

そして、少しはマシな人間になれたら、ふたりにも顔を見せに行こう。



目を見てくれないかもしれない。けど、いつか『言えばよかった』と後悔しないように。

会って、迷惑をかけたことを謝って、じいちゃんのおかげでここまできたことを伝えよう。



夢が、目標が、どんどんと膨らんでいく。