その日の夜、父親から言われたのは『出て行け』のひと言だった。
『お前みたいな恥さらしをもう息子だとは思わない。出て行け。そして今後一切顔を見せるな』
顔も見ずに、背中を向けたまま。
なんでだよ、信じろよ、そう言って掴みかかって目と目を合わせれば、なにか伝わるものもあったのかもしれない。
けれど、もうそんな気力は俺にはなくて。
どうせもう、何を言っても無駄だ。そう諦めて、家を出た。
なにもかも、無駄に思えた。
なんで生きてきたんだろう。なんで生きているんだろう。俺の存在意義ってなんだろう。
考えても答えは出なくて、もう、死にたいという思いがよぎった。
どうせ死ぬのなら、最後に会っておきたい人がいる。そう心に浮かんだのは、じいちゃんの姿だった。
その顔を思い浮かべたら、迷うことなく足はじいちゃんの家に向かっていた。
中学にあがってから、あまり来ることのなかったこの家。けれど、そこはあいかわらずちゃんとあって、ひどく心を安心させた。
『……じいちゃん、久しぶり』
『新太。どうした?』
『なんとなく、顔見たくて』
きっと、情けない笑顔をしていたんだと思う。
笑った俺にじいちゃんはなにかを察したように家に入れて、『まずは風呂に入ってこい』『そしたら飯だ』『今夜は泊れ』と、深くは聞かずに泊めてくれた。
いつでも変わらないじいちゃんに、自然と話を聞いてもらいたいと思うようになって、俺はこれまでのことを話した。