お墓まいりを終え、借りた手桶などを返した私たちは、バイクに乗って新太の家に戻って行く。
無機質なビルから緑の多い自然へと変わる景色に、彼と初めて会ったあの日のことを思い出した。
まだ、丸一週間も経っていない日のこと。
だけど懐かしさすら覚えてしまうのは、それほどまでに濃密な時間を新太と過ごせている証だろうか。
「……新太」
「ん?」
「話してくれて、ありがとう。新太の、こと」
立派じゃない過去のことを話すには勇気がいる。
その気持ちを私も知っているからこそ、新太が余程の勇気を出してくれたのだろうと思う。
だから、『ありがとう』を伝えたい。
「お礼なんてやめてよ。俺はただ、じいちゃんと先生の自慢をしたかっただけ」
向かい風にあおられながら、「ははっ」と笑う横顔は、本心にも照れ隠しにも感じられた。
「ついでに話しておくとね、『1週間』って期限を決めたのは、なぎさのことを迷惑に思ってるとか、そういうことじゃないんだ」
「え?」
「ずっと一緒にいられたら、きっと楽しいよ。なぎさとトラと一緒に、当たり前を取り戻しながら生きていけたら、きっと」
胸を張って生きていくこと、失くした存在の穴を埋めて暮らしていくこと。
それぞれに、『当たり前の毎日』を取り戻す。
そんな日々を、一緒にいられたら楽しい、なんて。新太も思っていてくれたんだ。
嬉しさを感じ、新太に掴まる手にぎゅっと力を込める。けれど、新太は「だけど」と言葉を続けた。