「っ……」



胸にこみ上げる想いを伝えたくて、新太の手をぎゅっと握る。

瞳からこぼれた大粒の涙は、視界をにじませ頬を伝い落ちると、私の膝を濡らした。



「……なんでなぎさが泣くの」

「っ……わかんない……」



わかんない、わかんないよ。

だけど、新太の心や、おじいちゃんのこと、お父さんの思いに、涙はこらえきれない。



そんな私の涙を、新太はその長い指先でそっと拭ってくれた。

困ったように笑いながらも、ほんの少し泣きそうな、そんな彼の表情に心が愛おしさであふれる。



新太の、おじいちゃん。

聞こえますか?

勝手に家に泊まり込んでいて、ごめんなさい。

でも私は、あの家で、新太からたくさんのものをもらいました。

新太に会えて、こんなにあたたかい人もいるんだって思いました。



あなたが新太に伝えた心は、今こうして私にも伝わっています。



だから、ありがとう。

今日この日まで、生きていてよかった。

そう思うと同時に

幸せも苦しみもあるこの世界で、まだ、生きていたい。

そう強く想います。




「手合わせたら行こうか」

「うん」



お線香に火をつけて、新太と一緒にお墓の前で手を合わせる。



目を閉じた瞬間、お墓の向こうでわらうおじいちゃんの姿が見えた気がした。

目を細めて笑うその人の表情は、新太にどこかよく似ていて、今もずっと、新太を見守っているのだろう。



おじいちゃんがいたから、新太がいる

新太がいるから、私も今ここにいる



それはなにより強い絆で、幸せな運命だと思った。