「なぎさが深津先生の娘だって気付いた時にさ、助けるとか支えるとか、そんな大きなことができるとは思ってなかったよ。ただ、ほんの少しでも力になれたらって、そう思ったんだ」



新太は、重ねていたんだろう。

光を失い、生きることを諦めようとした自分と私を。

だからこそ、お父さんの気持ちも知ったうえで、なにも言わずに私との日々を過ごしてくれた。



「知ってほしかった。世界はまだまだ広くて、こんな俺でも夢をみつけられるくらい明るくて、つらいこと以上の幸せがあること。知らずに失くしてしまうなんて、もったいない」



この先、きっと私にも、新太にも。誰にだって訪れる、つらいこと以上の幸せ。

それを知らずに投げ出すなんて、もったいない。



「命はいつか終わる。なら、その日まで目いっぱいいろんなことをして、考えて泣いて笑って、そうやって生きていったほうが、きっと楽しいよ」



そう真っ直ぐこちらを見た彼の瞳には、泣きそうな私の顔が映り込んでいる。



新太の優しさの理由を、少し知れた気がした。

いつもさりげない優しさや言葉で私を支えてくれるのは、新太自身がこれまでおじいちゃんやお父さん、いろんな人の言葉に支えられてきたからだったんだね。



ねぇ、でもね、新太。

おじいちゃんになにも出来なかった、なんて言わないで。

きっと新太が知らないだけで、なにか出来ていたはずだよ。

その言葉が、優しさが、私をこの世界に繋ぎ止めてくれたのと、同じように。



自分が消えてからも思ってくれる人がいて、おじいちゃんは、絶対、絶対幸せだった。