「じいちゃんが亡くなってから、ずっと呆然とするしか出来なくて……やっと学校通えるようになった頃、深津先生が声かけてくれたことがあったんた」

「お父さん、が?」

「多分俺、今にも死にそうな顔してたんだろうね。『大丈夫か』って、声かけてくれてさ」



まさか、ここにお父さんの名前が出てくるとは思わず、目を丸くした。



「『正直、なんのために生きてるかわからない』って言った俺に、深津先生が言ってくれたんだ。『理由なんてこれから探していけばいい』って」



それは、先日新太が私に言ってくれた言葉。

受け売り、とは言っていたけど……それがまさか、お父さんが新太に言ったものだったなんて。



「……先生らしいこと、言えるんだ」

「あはは、先生だからねぇ」



ぽつりとつぶやいた私に、新太はおかしそうに笑って、すぐ真剣な表情に戻る。



「自分の娘がいじめを受けていたこと、それに微塵も気付けなかったこと。娘が自殺しようとして、やっと気付いた時には手遅れだったこと。きっと生徒なんかには話したくないだろうことを、話してくれた」



そんな、軽い気持ちで話せるようなものではない話。

それを話せるほど、新太に信頼があったのか、それともそれを打ち明けてまで新太に伝えたいことがあったのだろうか。

その真意を察するように、新太は真剣な眼差しのまま。



「それらを話してくれた上で、言ってた。『つまずいても迷っても、生きてくれていれば、それだけでいい。お前のご両親も、心の底ではきっとそう思ってる』って……泣いてた」



泣いて、いた。

お父さんが私の話をして、『生きてくれていれば』、なんて言っていたなんて。

まるで、私に向けられた言葉のように感じられて、胸がぎゅっと掴まれる。