「じいちゃんからもらった数えきれないほどのものを、ここで終わらせたくないって思った。こんな自分でも誰かのためになりたいって思って……だから、奨学金制度使って大学入って、勉強して、バイトもしてさ」



もらった気持ちを、それだけで終わらせないように。

いつか、誰かのために。そう繋いでいくことで、未来ではもっと大きな希望になる。



「じいちゃんにもこれから返していきたいって思ってた。……なのに、半年前に倒れて入院して、たった3ヶ月で死んじゃうなんて。あんまりだよね」



『死』、という言葉を口にする新太は笑顔のまま。

それなのに、そのたったひと言はこの胸に鉛のようにずしりと重く沈む。



「人ってさ、どんなに元気でもいつか死んじゃうんだよ。望んでも願っても、一生は生きられない」



私が一度捨てようとした命。

それは、本人や周りが、望んでも願ってもいつか必ず失うもの。

『その時』はいつか必ず、皆に平等にやってくる。



「その人に生きてほしいと願っても、周りがでいることなんて限られていて……じいちゃんの余命が長くないって聞いた時、俺はなにもできない自分に、絶望した」

「新太……」



だから新太は、この前私に怒ったんだ。



『死ぬってことが、どんなことかわかってる?』



失った側だからこそ感じる思いを、新太自身も知っているから。

彼の胸の痛みを想像して、自分の幼い発言を悔やむように拳をぎゅっと握った。そんな私に、新太はぽんぽんと頭を優しく撫でてくれる。



「俺、なぎさがいじめを受けてたこと、知ってたよ」

「え……?」



知って、た?

なんで……誰から、聞いて?

予想もしなかった突然の発言に激しく驚きを見せる私に、新太は小さく頷く。