「親とも元々仲良くはなかったんだけど、中3の時に起きたことがきっかけで、『お前みたいな恥さらしはもう息子じゃない』って家追い出されてさ」
「親、に……」
「散々放置してたくせに都合のいい時だけ親っぽいっこと言いやがって、って悔しさもあったけど、こんな俺なら当然か、って気持ちもあった。けどじいちゃんだけは、そんな俺を見捨てたりしなくて。『どうせ行くとこないならうちに住め』って」
見放した親と、それを仕方ないと受け入れた新太。
諦めたような言い方で、でもその胸が傷ついていたのだろうことは、今彼が見せる悲しげな目ひとつだけで感じられる。
だからこそ、おじいちゃんのそのひと言が、新太にとってとてつもなく大きいことだったのかもしれない。
「当然じいちゃんとうちの親の仲は最悪になっちゃったわけだけど。それでもじいちゃんは『周りにどう見られようと、じいちゃんは新太の味方だ』なんて言ってくれてさ」
その時のことを思い出しているのだろう、「はは」とおかしそうに笑う。
周りの目を気にしない、そう堂々と言い張れるところは、なんだかとても新太のおじいちゃんらしい。
「それからはもう、毎日大騒ぎ。喧嘩して帰れば叱られて、高校も行っておけって勉強させられて、ついでに料理も教え込まれて。次第に、勉強が楽しいとか料理を食べてもらえるとうれしいとか、知らなかった気持ちが増えていった」
新太は目を細めると、空を見上げる。つられて顔を上げると、綺麗な青空が広がっていた。
「いつしか、誰かの役に立ちたいって気持ちが芽生えて、夢も希望もなかった未来に、なりたいと思えるものができた」
「それが、スポーツトレーナー?」
空から私へ視線を移し、新太は「そう」と頷く。
そっか。今の新太を作ってくれている、生活や夢、目標……それらはおじいちゃんがいたからこそ出来上がったものなんだ。