「うちも両親共働きでさ。学校帰りとか土日とかは、よくじいちゃんのところに預けられてたんだよね」

「そうだったんだ……」

「ちなみにいつもなぎさが座ってる席はじいちゃんが座ってたところ。だからそこに人がいると、安心するんだ」



言いながらこぼす笑顔はその日々を思い出しているのか、うれしそうで優しい。

その笑顔に、胸は小さく音を立て、つい私もつられて笑った。



「なに?どうかした?」

「ううん。新太、本当におじいちゃんのことが好きなんだと思って」



くす、と笑って言った私に、新太はちょっと照れたように笑みを見せる。

けれど、その表情は一瞬、悲しげに影を落とした。



「じいちゃんは俺にとって、たったひとりの家族だから」

「え……?」



たったひとりの、家族……。

それって、どういう意味?

そう問いかけるように聞き返すと、新太は手桶の中の水を柄杓でそっと墓石にかけた。



「俺、家族から絶縁されてるんだよね」

「絶縁……?」

「俺さ、中学の頃問題児って言われてたんだ。喧嘩ばっかりしてて、頭も金髪で、いきがって煙草吸ったりして」



その口から話されたのは、予想もしなかった彼の過去。



も、問題児?

喧嘩、金髪、煙草……どれも今の新太からは微塵も想像つかないような言葉に、耳を疑う。