「おじいちゃんのお墓、ここの霊園にあったんだ」
「うん。じいちゃんの実家はこっちのほうでさ、この前なぎさと出会った日も、実はお墓参りの帰りだったんだ。めずらしくトラの顔も見せてあげたくて連れてきたはいいけど、あいつその時も逃げ出しちゃって」
「あ……だからあの時、うちの近くに?」
あの日、新太と出会った日のことを思い出しながら聞くと、新太は小さくうなずく。
「そ。今思えば、トラが逃げ出さなかったらなぎさに会えなかったんだから、不思議なものだよねぇ」
へへ、と笑いながら、新太はお墓の前に腰を下ろす。
そう、だ。
普段は違う街にいる新太と、あの家の中にいる私。そんなふたりが出会えたことは、いくつもの偶然が重なったから。
そう思うと、偶然ではなく、奇跡に近いのかもしれない。……なんて都合のいい呼び名をした私を笑うように、穏やかな風が髪を揺らした。
「なぎさ、ここに花お供えしてくれる?」
「うん」
新太に言われ、私は手にしていたお花を墓石の前にそっと供えた。
「新太は、おじいちゃんとはいつから一緒に暮らしてるの?」
「中3のときかな。でももともと子供の頃から、毎日のようにじいちゃんの家には行ってたし、よく泊まったりもしてたから」
「へぇ、おじいちゃんっ子なんだ」
思えば、自ら質問をして新太についてのことを聞こうとしたことがあまりなかった。
本来ならもっと先に聞いておくべきだったようなことを、ひとつひとつ問いかける。