慌てて振り向くと
すでに私のスマホの画面をタップしていた
『ちょっー』
と、
かぶせて発せられた言葉に冷や汗が出る
嬉しそうな秀人の声だ
ずっと着信もメールも無視してきたんだ
唇を結び、私は黙りだ
だって、何故スピーカーなのか
そして井内さんが笑っている
不審に思ったのか
葵?とまた秀人の声がする
ゆっくり近づいてきた井内さん
何をするのか目を離さないでいると
私の耳にスマホを当ててきた
スピーカーになっている以上
こんなことしても無駄なのに、と
思いながらも私は口を開かない
「女性からの話と食い違いますよね?」
小さな声で囁いた
私は目を見開き驚いた
何故そんな事を井内さんが知っているのかわからない
その声を拾ったのか
「え?葵?誰かいるの?話が食い違うってなに?」とうろたえるような声が聞こえた