何度も私の名前を呼び
優しい笑顔を向けてくる
何故かいつもの口調と違い
若干の違和感を感じる


その度に隣に座っている
スミレが私の肩を叩き
「先輩、羨ましい」と言ってくる



スミレ、あの笑顔は偽物だ
私にあんな笑顔を見せたことないよ


どれだけ呑んでも
なぜか今日は酔えない
もういっぱい、と頼もうとした時

私の手を制したのは井内さん


「葵、今日はそこまで」


『なんでよ、いいでしょ!?』


井内さんの言葉を無視して
お酒を注文しようとしたら


「帰ってから、葵と楽しみたいから、もうダメだよ」


声を潜めて言ってきたが
スミレには丸聞こえだ
いや、スミレに聞かせるように
ワザと言ったのだ



「先輩!もうお開きにしましょう!」



案の定、スミレは井内さんの手に引っかかったわけだ
スミレに見送られ
私と井内さんはタクシーに乗せられてしまい、助けを求めたい一心でスミレを見ればにこやかに手を振っていた