水で冷やされている手
心配そうに私の手を眺めている井内さんに私は申し訳なく思う


『あ、あの、大丈夫です。思っていたより熱かっただけで、火傷になるほどではありませんので…、ごめんなさい』


「いや、それでも痕が残るかもしれません。綺麗な手なので痕は残したくありませんので、」


残したくないって…
自分のものみたいな言い方だ
だから違うって、と言いたいが
今だけは黙っていた




「ちゃんと鍵をかけてください。何かあったら連絡するように。これ、連絡先です。夜更かしせず寝てください」


差し出された名刺には
手書きで番号が書かれていた
井内さんらしい、綺麗な字
言いたいことを言ったのか
玄関のドアを開けていた

帰るのかと思えばバタンと閉まる
何だろ?とマジマジ井内さんを見上げる


「大事なことを忘れるところだった」


その言葉と同時に
私の目の前は影になった