「でもね、俊ちゃんは覚えてた。忘れられなかったのよ。毎日のように空ちゃんとひとつのマフィンを半分こして頬張るあなたを。買う時に凄く笑顔で去っていくあなたを。」
忘れられなかった?
「流石にもう12年ね。顔は少し大人っぽくなっているから、最初はわからなかったわ。でも、抹茶マフィンを頼んだ時、もしかしてって…」
おばちゃんは僕を忘れられなかったらしい。
空とずっと一緒にいたのを見ていたから。
「マフィンを食べながら泣くあなたを見てわかった。俊ちゃんだ!って。俊ちゃんはやっぱり、あの日から変わってないんだなぁって。」
『時間が止まってる。』
やっぱり…変わってないんだ。