「今日は…いきなり、ごめんね。ここのマフィン、凄く食べたくて…それが俊を苦しませるとか、思ってなかった。」

「何で笹野があやま…」

笹野は手で僕の口を抑えた。

「ウチはね、空の代わりでいいって思ってる。それで、俊の時間がまた動くなら。でも、ダメなんだね。名前も姿も…全部、空がいいんだって…」

そう言って笹野は立ち上がった。

そして、

「ウチは、俊が好きだよ。空のことを思ってる俊を含めて全部好き。だから…」

――チュッ

笹野は自分の指に口を付けて、その指を僕の口に持ってきた。

「絶対絶対、俊を振り向かせるから。いつになってもいい。三十路の女は強いのよ!!」