色がついていない全てが白い部屋の中、机も椅子も簡易ベッドも白一色。
 光が壁の白に溶け込むように、全てのものの存在が白く同化されていくようだった。

 ジョーイは茫洋な空間で、真っ白い雲の上に置き去りにされ、ふわふわと漂っている錯覚に陥る。
 それが不快感となり、我慢の限界に達した。

 全てを忘れてしまいたい──。
 突然の感情にジョーイは沈黙を破った。

「先生、アスカは本当は俺が作り出した想像上の人物なんです。あの爆発もただのガス爆発の事故だった。だからもうこの治療は必要ないです。全て俺が作り上げたイマジネーション」

 早川真須美はジョーイの発言を無視して腕時計に目をやった。

「今日はここまでにしましょう。新学期が始まったらまた定期的にカウンセリングをするということでいいわね」

「いつまでこんなことするんですか? もう架空の話を聞いてもつまらないでしょ」

「架空の話? つまらなくないわよ。ジョーイの心が覗けるもの。ジョーイの心の奥底に自分でも分かってないものが潜んでいるわ。ゆっくりと過去の話に付き合っていきましょう」

「だからそれがなんのためになるんですか?」

「あなたの心の傷を取り除いて笑顔を取り戻すためよ」

「俺はそう思わない」

「あら、どういう意味?」