あたしにとって暑いのは大の苦手。
冬はそんなに辛くないんだけど。
――……
そしていつの間にか放課後。
まだセミの鳴き声がうるさいけど、朝ほど嫌な気分じゃない。
早く家に帰ってアイス食べて寝て……
そんなことを考えながらも私が向かったのは家ではなく――
「やっぱあつーい!」
神社。
ここの神社は、私の一番の想い出の場所。
もう今は死んでしまった兄と、よく遊んだ場所……。
だから、どんなに暑くってもどんなに寒くっても、例え台風でも。
私は毎日必ずここに来る。
ここに来るとね、なんだか不思議な気持ちになるの。
安心するんだ。……温かい。
まるで、まだお兄ちゃんと一緒にいるような感じ。
もう……一緒に遊んだのは十年も前のことなのにね。
「麗夏」
「……へっ?」
突然だれかに名前を呼ばれて辺りを見回すけど……
「誰もいない?」