「はぁぁ~……」
声にならないほどの情けない声が漏れる。
「よかったね~! 麗夏!」
そんな穂乃華の声すら聞こえなくなるぐらい、あたしにとっては嬉しいことだった。
―キーンコーンカーンコーン
「あっ、一限目始まっちゃう」
「麗ー夏? 私席つくね?」
「うん……」
だめだこりゃ、と真弥たちが笑いあっている。
でも、そんなことどうだっていい。
だって……あの鈴原くんが『おはよう』って……
嬉しすぎる~!!
そんな気分のまま授業を受けていたら、気づけばどんどんと時間が流れていた。
レナも、こんな体験をしたんだ。
レナは、二年後の未来からやって来た。
これからあたしに起こることもすべて知ってるはず。
だけど、未来のことなんてさっぱりわからないあたしには、レナがあのとき悲しそうに微笑んだ理由がずっと引っ掛かっていた。
二年後のあたしに彼氏ができてるなんて。
そんなの嬉しいに決まってるのに、なんでレナはあんな表情で笑ったんだろう。
「わかんない、よね……」
そりゃそうだ。
いくらレナが二年後のあたしだっていっても、レナはレナで、あたしはあたし。
レナとあたしは、違うんだ……。
「麗夏! またボーッとしてたでしょ!」
「え?」
あ、いつの間にか休み時間になっていた。
こんなにざわざわしてるのに気づかないなんて……。
「まだ、昨日のアイスのこと気にしてんの?」
「あはは、違うよ~」
いつものようにくだらないことで真弥にからかわれても、なんだかうまく笑うことができない。
ずっと頭の中にあるのは、レナのこと。
なんでこんなにも気になるんだろう……?
さっきまでは鈴原くんに挨拶なんかされちゃってすごい舞い上がってたはずなのに。