父さんは昔からそんなに厳しい人ではなかった。お小遣いが欲しい時は、理由をちゃんと言えば、それにふさわしい金額をくれる。海に行きたいと言えば、暇ができれば連れていってくれる。厳しくも甘くもない、調度良いくらいの性格だった。しかし、姉が失踪してから、少し厳しくなった。門限は、午後8時だったのが、午後6時になった。ゲーセンやカラオケ等は、父さんが同伴しない限りは、行くのが禁止になった。僕の事を心配してくれているのはわかっているが、少し厳し過ぎる気がしている。そんな父さんも、『姉のため』だとか、『姉が見つかるかも』と言う言葉には弱かった。だから、こんな夜中の外出も許してしまうらしい。
(折角父さんが許してくれたんだし、なおさら噂の有無をはっきりさせなきゃな。)
午前1時50分、俺は放送室のドア前についた。