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「…ネロが…ネロがぁ…ああぁあ!!!!」


五年前、玄関で泣き崩れる母を、僕…川里イヴは必死で起こした。


母が急に泣き出す姿なんて、初めて見るから、イヴはパニック状態に陥ってしまった。



「……母さん!?どうしたの!?」


どれだけ喋りかけても、母はまともな反応を見せず、狂ったように泣き叫ぶ。


…その光景が、とても恐ろしく感じた。




「…ね…ネロ…ネロが…あああぁあん!!!」



………ネロ?



イヴは母の肩をしっかり掴むと、叫んだ。



「母さん!!!しっかりして!!!ね…ネロが…ネロがどうしたの!??」


叫んだ瞬間、母の肩がピクリと震えた。


母は涙で濡れた顔をイヴに向けると、やっと目がいつものように戻った。





「………母さん…」


「イヴ……イヴぅうう…!!!!」



イヴの胸に飛び込むと、母はまた泣いた。



もう、理解できない。


「頼むから、ちゃんと喋って…」


そう呟くと、母は震える手で、イヴの目の前に、焦げ茶色の便箋を見せた。




「……………?」