「………う…そ」



そんなこと…あるはずないよ。


だって、ネロはゲームに参加するような娘じゃないし、


争いは嫌いだし


人を傷つける事なんて、ありえない…


…心優しい、自慢の妹だ…



灰色の瞳が、涙で滲んだ。



「……母さん」



イヴは泣く感情を無理矢理抑えると、母がよろめいて行った廊下を、速足で歩いた。



何故か、胸騒ぎが止まらない。



「母さん!!!母さん…」



どこの部屋を捜しても、母の姿は見当たらない。



イヴは便箋をにぎりしめ、ひたすら母の姿を捜した。



廊下を速足で渡っている時、何故か、普段の柔らかい笑顔で笑っている母と、さっき見た失望している、瞳に光がない母が同時に頭に浮かんだ。



イヴは額に一筋の汗を流した。



「母さん…母さん…?」