「雪が降っているの。とってもきれい」

 わたしは走ってきた影響か、途切れがちになる言葉をできるだけなめらなに綴った。
 義高様の表情が窓の外に映った。彼は目を見張る。

「ここでも雪が降るとは」
「義高様の故郷でも雪が降るの?」

 彼は首を縦に振った。

「数えるほどですが、見たことがあります。ただ、すぐにやんでしまいますが」
「今回は積もるといいですね。そうしたら一緒に遊びましょう」

 わたしはこぶしを握ると、目を細めた。

「そうですね」

 そのとき、屋敷内が心なしかざわついていた。
 人の足音と、声がどことなく聞こえた。
 雪が降ったため、皆喜んでいるのだろうか。

 わたしは降り積もる雪が消えないことを願い、目で追っていた。
 少しして、女性がわたしの部屋までやってきた。
 彼女の表情はどことなく固い。

「姫様、部屋に戻りましょう」
「嫌。もう少し義高様と一緒にいるの」
「姫様」

 いつもはわたしのわがままを聞いてくれる女性はわたしの腕を掴んだ。彼女は唇に歯を立てた。

「お願いします。部屋にお戻りください」