もう一度振り返ると、仲良く話をする二人を見て深呼吸をした。

「川本さん」

 彼は驚いたように振り返った。そして、隣にいる女の子に声をかけると、わたしのところまで寄ってきたのだ。

「何かあった?」
「そうじゃなくて」

 わたしはちらりとあの子を見た。あの子は苦笑いを浮かべると、頭をかいていた。
 彼女はわたしたちのところまで歩み寄ってきた。

「わたしが義純と仲良くしているから、どんな関係なのか勘ぐってしまったんじゃないの?」
「どんな関係って、ただの幼馴染だけど」

 川本さんは驚いたようにわたしを見た。

 彼女はわたしの傍に来ると、目を細めた。

「江本沙希です。高校二年であなたと同じ年よ。父親同士が友人だったから、そのつながりで今でも親しいの。わたしにとって彼は兄のような存在かな」

 その言葉に一瞬、川本さんが顔を強張らせた。だが、いつも通りの彼にすぐに戻った。

「変な関係じゃないから安心してね。わたしは一足先に失礼しようかな」
「いいの。わたしが勝手に追いかけてきただけだから、今日は失礼します」

 わたしは頭を下げ、別れの挨拶を綴るとその場を去った。
 何もないのは彼女の言い方から分かった。だが、川本さんを見ていると二人の間には幼馴染以上の何かがあるようにして思えなかった。