頭の中ではやめておくべきだという声が響いていたのにも関わらず、わたしは川本さんの後を追っていた。
 そこからしばらく歩いた曲がり角に川本さんがいた。その隣には彼と同じ高校の制服を着た、あの少女が立っていた。彼女に手には大きなスーパーのビニール袋が二つ握られていた。

 彼女は川本さんを見ると、得意げな笑みを浮かべた。

「今日はコロッケと、カレーを作ってあげる。あとスープも」
「わざわざ悪いな」
「わたしと義純の仲じゃない。今更、何を気にしているの?」

「でも、君にいろいろ迷惑をかけるのが申し訳なくて」
「それは言わない約束でしょう。わたしが好きでやっているのだから、気にしないで」

 彼女はそう優しく微笑んだ。
 どこで勉強をする、彼の家がどうだということが問題だったわけではない。
 彼女はただの同じ学校の生徒ではなかった。その事実がわたしの胸に突き刺さっていた。

 家に帰ろうと決意して、踵を返した。
 だが、わたしは歩き出さなかった。
 このままじゃきっとダメだと思ったのだ。
 一人で考えてもやもやするよりも、はっきり答えを知ってしまったほうがいい。