「川本さんは英語得意なんですか?」
「そうでもないよ。人並みにはできるかな」
「わたしも得意だと思っていたけど、あんなにすらすら読めるってすごいなと思いました」

「高校二年と三年じゃ一年違うし、そこそこ勉強もしていたからね。高校一年くらいまでは大学にも普通にいけるんじゃないかって考えていた。今でもその習慣が抜けないんだ」

 わたしの胸が痛んだ。舞い上がっていろいろ聞いてしまった己の行動を恥じた。

「ごめんなさい。無神経なことを言ってしまいましたね」
「別に気にしていないからいいよ。受け入れないといけないんだろうなって思っている」
「川本さんは就職なさるんですよね。就職活動はしているんですか?」

「いやまだだよ。ただ、少しでも夢に近いところがいいかなって思う気持ちと、全く関係ない職種のほうがいいかなという気持ちが拮抗しているんだ」

「夢?」
「弁護士になりたかったんだ」

 その言葉にドキッとした。わたしがお母さんに弁護士になればいいと言われていたからだろうか。彼が大学に行けば、同じ目標をもって歩んでいけたのかもしれない。