「メールが届かないから、何かあったとは思っていたけど。わざわざありがとう」
彼はそのメモを半分に畳むと、ぎゅっと握った。
「このまま会わないほうがいいのかってずっと考えていた」
その言葉にわたしは自分の顔が引きつるのが分かった。
「そんなことない」
「君のお母さんがこの前家に来たんだ。君とは二度と会わないでほしいと言われたよ」
わたしは目を見張った。
「わたしはそんなこと考えてないし、他に失礼なことを言わなかった?」
「君のお母さんが言いたいことは分かる。きっと君のお母さんは君に幸せになってほしいんだと思う。今日の君を見て分かったよ。だから、もう俺たちは会わないほうがいいと思う」
「そんなことない。だって、わたしは川本さんがいないと幸せになれないの。もう一人にしないでほしいの」
わたしは自分でも驚くほど大きな声をあげていた。
周りの目が集まるのが分かったが、そんなことを気にしていられなかった。
このまま彼と離れ離れになるのがどうしても嫌だったのだ。
「わたし、分かったの。どうしてあんな夢を見ていたのか。そして、思い出したの。もう一人にはなりたくない。ずっとそばにいたい。だから、そんなこと言わないで」
彼はわたしの頬に手を当てた。その眼には涙が浮かんでいた。