「高校生の恋愛なんていずれダメになる。だから、新しい人を見つけなさいって言うの。でも、わたしは川本さん以外の誰かを好きになれる気がしないの」

 榮子は唇を噛んだ。

「そうだね。相手を本気で好きになるのに年齢は関係ないと思うよ。ただ、出会うのが遅いか早いかだけで。おばさんは川本さんがその人の息子だからダメだと言っているんだよね」

「そうだと思う」

「だったらわたしたちにできることはないのかな。もっと成績をあげればいいとか単純なことでおばさんに理解してもらえばいいんだけど」

 彼女はあごに手を当て、じっと考えていた。

「おじさんは知らないの?」

「言ってないと思う。お父さんも川本さんのお父さんと会った時の様子を見ていたら、賛成はしてくれないと思う」
「両親が二人とも反対していると難しいね」
「本当にね」

 そのとき、榮子の携帯がなった。電話を受けた榮子の表情が明るくなった。彼女は今いる店の名前を告げた。
 携帯を切ると、目を細めた。

「今から少しだけ出てくるって。十五分くらいしか休みが取れないみたいだけど。わたしはここにいるから、外で待っていたらいいよ。そして、ちゃんと話をしたほうがいいよ。まずは連絡先を交換してさ」
「また、携帯を取り上げられるかもしれない」
「そのときはわたしが仲介してあげるから」

 榮子は目を細めた。

「このままで終わらせたくないんでしょう。だったら、今頑張らないとね。後悔したくないんでしょう」

 わたしは頷いた。
 もう離れ離れになりたくなかった。

 わたしは鞄からメモを取りだし、自分の番号を記す。そのメモを片手に店の外に出ると、天を仰いだ。