榮子とは仲が良く、長い付き合いだ。彼女のいいところもたくさん知っていると思っていた。だが、わたしと彼のことをそこまで気遣ってくれるとは思わなかった。わたしは川本さんとのことは必要最低限のことしか話をしていないのに。お母さんがなぜ、川本さんに会うのを反対しているのかも彼女には言っていない。だが、彼女は何も聞かずにわたしのためにあれこれしてくれていた。

「いろいろごめんね。わたしのお父さんと川本さんのお父さんは同じ会社に勤めていたんだって。それでトラブルが起きて、それが原因でお母さんは川本さんと会うのを反対しているの。それ以前にも川本さんは生活費のためにバイトをしているらしくて、高校生の息子にそこまでさせるような親を持っていることに対して、不信はあったみたいだけどね」

「そうだったんだ。何かあるんだろうとは思っていたけどね。いろいろ複雑だったんだね」

 榮子は短く息を吐いた。

「川本さんのお父さんは会社を辞めたの?」

 わたしは首を縦に振った。

「その後、仕事はしているんだよね」
「その辺りははっきり聞いてないけど、川本さんのバイト代だけでは生活できないと思うからしているとは思う」
「そっか。大変なんだね」

 江本さんもアルバイトをしていた。彼女のお父さんも仕事を辞めていた。川本さんと同じような状況なのだろうか。

「おばさんは心配なんだよ。ただ、今の一方的に会せないようにするだけでは何も解決にならないと思うけど」