女物の着物を着た義高様は困ったように会釈をした。

「まさかこんな姿をすることになるとは」
「よくお似合いですよ」

 小太郎様の言葉に義高様の顔がより赤く染まった。

「そろそろ行きましょう」

 女性は藁で作られた帽子を義高様に差し出した。

「分かりました。行きましょう」

 義高様の視線がわたしの前で止まる。

「姫に会えてよかったと思っている。ここに来てこんなに幸せな時間を過ごせるとは考えてもみなかった」

 嬉しい言葉だが、その中に彼の覚悟が垣間見えて、わたしの心が痛んだ。
 無理もない。

 ここに残るわたしにもできることがあるはずだ。
 小太郎様を殺させないこと、そして、義高様を助ける方法を模索すること。
 悲しんでばかりはいられない。

「また、会えます。わたしが必ずお父様を説得して、義高様に会いに行きます。時間はかかるかもしれません。だから、それまで待っていてください」