「それは大丈夫です。万一のときは覚悟しております。ただ、一つだけ言いにくいことを申し上げないといけません。義高様が去ったことを周りには悟られないようにしませんといけません。そのためには誰かがこの部屋に残り、義高様が残っているように振る舞い続けないといけません」
女性は小太郎様を見た。
彼はその眼から何かを感じ取ったのか、短く息を吐いた。
「わたしはここでお別れです」
彼は義高様にそう告げた。
「わたしがここに残ります。どれほど持つかは分かりませんが」
「そんなことをしたら小太郎様は間違いなくお父様に殺されてしまいます」
わたしの言葉に小太郎様は笑っていた。
「覚悟の上です。わたしもここに来た時から、覚悟はしておりました。姫様と同じです。わたしも義高様に生きてほしいと思っています」
「分かった。その案を受け入れるよ」
義高様は苦々しい口調でわたしたちの案を受け入れた。
その晩のうちに義高様が脱出する手はずを整えてくれた。