わたしは義高様の部屋に行くと、お父様が義高様を殺そうとしている計画を立てていることを伝えた。

「そうですか」

 義高様は苦い表情を浮かべたまま、身動きしなかった。
 きっと彼はこの事実を受け入れるだろう。分かってはいたが、心の奥が痛んだ。

 それが習わしだ。

 何度言い聞かせてもわたしの目から涙が溢れ出した。
 義高様はそんなわたしをなだめるかのように優しく頭を撫でた。

「ここに来た時から覚悟はしていました。気になさらないでください」
「わたしは生きてほしい。義高様に」

「それは無理な願いでしょう。わたしのことは忘れてください。あなたにはあなたの幸せがあるのだから」
「わたしの幸せは義高様がいてこそです。ここから逃げてください」

「逃げると言っても、無理です。すぐに追手が来て捕まってしまいます。それにそんなことをしたら姫もただではすまないかもしれません。わたしのために姫を危険な目には合わせたくありません」

 そのとき、小太郎様が立ち上がり、障子の傍まで行く。彼はそのまま障子を開けた。そこにはさっき、わたしにお父様の計画を教えてくれた女性が立っていたのだ。小太郎様は戸惑いを露わにする彼女を睨んだ。