「おじさんは自分がもっとうまく立ち回っていれば、わたしのお母さんを死なせずに済んだんじゃないかと思いつめていて、時間的な要因もあったと思うけど、今みたいになってしまったの。義純も気にしているんだと思う。わたしからしてみれば、仕方ないことなのにね」

「ごめんなさい」

 彼女は少しの沈黙のあと、頭をかいた。

「これをわたしが言うのはどうかと思うけど、義純のお父さんとわたしのお母さんは幼馴染で、義純のお父さんはわたしのお母さんのことが好きだったんだって。だから、余計にね」

 わたしのお父さんが彼らを庇える立場にはあった。だが、そうはしなかったため、会社を辞めたのだろう。
 ただの幼馴染という言葉に苦い表情を浮かべていたのは、彼の中に罪悪感のような気持ちが存在していたのだろうか。

「いろいろごめんなさい」
「あなたが謝ることじゃないわよ。気になっていたことは少しは分かった?」

 彼女はわたしの表情から何かを悟っていたのだろう。
 わたしは首を縦に振った。

「はい。ありがとうございました」

 わたしは頭を下げた。

「気にしない。ずっと気になっていたの。わたしのお父さんがミスをしなければ、しても義純のお父さんを巻き込まなければ、今みたいな状況にはならないですんだんじゃないかとね。義純も自分の夢をあきらめずにすんだんじゃないかってね。わたしも誰かに話ができてほっとした」

 彼女は寂しそうに微笑んだ。
 川本さんだけではなく、彼女も罪の意識を抱き続けていたのだろう。
 だから幼馴染という言葉を連呼していたのだろうか。