あれ…………



「わぁ~~、ほんと綺麗だね。
ここの桜。」


「またいる。」


「え??」


「あの子。
今朝もここであんな風に立ってたんだ。」



今朝の綺麗な子


小柄で髪が肩ぐらいで
サラサラしてて、清楚で真面目そうな子


朝は気づかなかったけど、
ネクタイの色から同じ二年生だとわかる。


「可愛い子だね!あんな子いたっけ?
よし!ちょっと行ってくる!」



「え…!」



下り坂を勢いよくドタバタと下りていく悠里。


やっぱり無邪気でかわいいけど、
なんかちょっと危なっかしい。



僕も少し小走りで彼女のとこまで走った。


「ねえ!君!」


「…え?」



僕は初めて彼女の正面の顔をみた。
横顔だけでも十分に綺麗な顔をしていたのに正面から見るともう見惚れてしまうほどの美人だった。


「え!めっちゃ可愛い!
二年生だよね!何組??
私はね、西沢悠里!7組だよ!
なんでこんな可愛いのに見たことないんだろー?
ね、春翔!やばいね!悠里より可愛いかも!」


「自分でゆーな。
てか、しゃべりすぎだ。もうちょっと落ち着いて話しなさい。」


エヘっとつっこんでほしかったのか
満足そうに笑った。



するとクスクスと彼女は笑った。


「1組の三神奈月です。
私のこと知らないのは無理ないですよ。
転校してきたので。」


「そーなんだ!

あれ?
ちょっと~、春翔~!
何、奈月ちゃんに見惚れてるの~?!」


「な、な、み見惚れてないって!」




やば!
動揺しまくった!!


「冗談に言ったのに
本当に見惚れてたんだ……へー」


ちょっとふてた態度の悠里さん。


「違うって……」



否定するけど、
本当は見惚れてた。


ていっても好きになったわけじゃないから!



僕は話をそらすように三神さんに話しをふった。

僕が一番気になっていたこと。

朝のあのときも


「三神さん、
なんであんな風に桜を見てたの?」



僕の言葉に彼女はすぐに返事をしなかった。


「ここの桜綺麗だからね~。
私も桜に見とれて坂から転げ落ちたことあるよ~~」


「そーなんです。
綺麗だったから…。つい…。」


本当に思ったことをすぐ言う悠里。

彼女の反応から
ただ見とれてただけじゃない。


桜に何か深い思い出や過去があるのかな。



僕はその過去さえ知りたくなってしまった。


今日初めて会っただけの彼女だけど
僕にはあの瞳を忘れることができない。


何があったの?

何を思ってるの?



そんな風に気になって仕方なかったんだ。