じゃあもう、逃げるのやめよう!と、思い切って決断した時には、火球はかなり大きくなっていた。

あ、これ、もしかしてやばいかな。隕石に当たって死ぬ確率ってものすごく低いんじゃなかったっけ。

すぐそこで地響きが、した。私はぎゅっと目を閉じた。

強く身体を引かれるような感覚を、覚えた。






「……?」

やけに、静かだ。隕石が衝突したのではないのか。もっとこう、ゴウゴウと音が鳴るものではないのか。

いくら待ってもそのようなものは訪れず、さすがに何かがおかしいぞと思った時、耳元で、溜息のような音がした。

「……さすがに隕石が来て、逃げもしないのは、どうかと思うんだけどなあ」

そうして聞こえた声に、我が耳を疑った。

耳障りの良い、低すぎない声。いやに、聞き覚えがある。むしろ、ありすぎる。

そう言えば、不安定な浮遊感を感じるような。それに、抱きしめられているような、全身を包む体温。衝突と共に鈍っていた感覚が、徐々に戻ってくる。

恐る恐る、目を開ける。目の前には、シャツと、骨ばった首元。

顔を離して、相手を覗き込む。その、夜空を溶かしたような藍色の瞳に、はっと息を呑んだ。

「……ただいま、澄佳」