見上げた私の目に、映ったもの。それは、暗い夜空をまっすぐ進む、何か大きい、光っている球体で。
「流星群……?」
予定時刻よりだいぶ早いけど、と一瞬考えて、そう口にする。にしては、大きすぎるし進むのもゆっくりなような。それに、あんな音はしないはず。
──落下の時には巨大な火球が出現し、夜間は空が真昼のように明るくなることもある。
何かで読んだ説明文の一節が、ふと思い浮かぶ。
これは、隕石の説明のはずだ。叶多のこともあって、かなり調べていたから、わかる。
もう一度、まじまじと空を見る。流星より大きくて、ゆっくり進んでいる。火球の説明と、合致している。確か、音を出しながら進む隕石の例も多数あったはずだ。
「……えっ、隕石?!」
一拍おいて、状況を理解して頓狂な声をあげる。流星群と聞いてきたのに、隕石、隕石だなんて。しかもなんか、あれ、こっちに来ていないか?
「……え、ちょ、どうしよう!?」
慌てて辺りを見渡すも、寂れた山の頂上に隠れられる場所なんて、当然ない。しかも隕石なんて、ちょっと逃げたところであんまり意味無いんじゃないのだろうか。