「そう言えば私、叶多の制服以外の姿を見たことがなかったんだけど、何着てるんだろうね?」
不意にそんなことが思い浮かんで、問いかける。
いつからか、これが日課になっていた。何かを終えた時、これからする時、心が散らかった時。必ずここへ来て、星空にいるだろう叶多へ語りかける。それだけなのにすっと落ち着いて、心の整理が出来るのだ。
この時間が、好きだ。叶多はいないけれど、叶多がいるような時間を過ごせて。
……けれど、それでも。
「……やっぱ、会いたいなあ」
卒業証書をたたんで、視線を落として、思わずこぼれたのは、本音。
「遅いよ、叶多。まだ待たせるつもりななかな。このままだと私、大学も卒業して、東京とかに就職しちゃうんだからね」
手持ち無沙汰で、胸に抱きしめる。卒業して、ただの式典だと思ってはいたけれど、多分、寂しくなったんだと思う。だからこんなふうに、言わなくてもいいような本音が、漏れてしまっている。
「早く、帰ってきてよ、叶多……」
名前を呼んで、ちいさく溜息をついた時。
ゴオオオオオオオ、と、遠くから音が響く。
何の、音だろう。すぐにきょろきょろと辺りを見渡して、けれど頭上からの強い光に、その音の出所を悟る。
「な、なに、あれ……?」