星空へ誓った事は、もちろん忘れてはいない。私は今でも、叶多を待っている。

待っている、ということはつまり、叶多はまだ、帰っていないということで。

「……ううん、叶多は、帰ってくるよね」

浮かびかけた暗い感情を自分の言葉で打ち消して、私は、星見峠の頂上までの道を、せっせと歩き続けた。

この道も、この半年でだいぶ通い慣れた気がする。いつも、大体人気はないので、一人で星を見上げるのにはちょうどいい。

やがて、開けた場所へ出る。今日も、星空がよく見えた。特に今日は雲がなかったので、細かい星までよく見えた。

時刻は午後六時。家に帰って調べたのだけど、流星群の見られる予定は午前二時なのだとか。だから、いまここにいてもきっと流れ星は見えない。それでも、良かった。私は星空と、会話をしに来たのだから。

「叶多、私、卒業したよ」

まっすぐに北の空を見上げて、話しかける。斜めにかけていた鞄から卒業証書を広げて、ほら、と見せるように掲げた。

「帰ってくるの、遅すぎだよ叶多。もう制服着れないんだよ?」

まあ、それは私もか。自分自身につっこみを入れて、ちいさく笑った。