しかもニヤニヤと笑っていた。

 ほんと、こんな状況にはこいつは慣れきっているんだろうな、なんて思ったら私の腕を掴み、そのまま廊下へと連れ出された。

 そういや中学生のときもこんな目にあったような……。

 て、そんな事思い出してる場合じゃない!

「――離してよっ!」

 私は掴まれている左手に抵抗を試みるけれど一向に離してくれやしない。それどころか力が逆に増してる気がする。

 抵抗も虚しく完全空回り状態。

 その様子に楽しそうに笑っている。

 私のことを完全に遊んでる。

「なんで教室なんかに来たのっ?!」

「新聞のインタビューしに来たんだけど?」

 私は半ば怒り気味に訊いたのに北村君の口からあっさりとまともな返答を言われ、急に今までの勢いがしぼんだ。

 思いっきり脱力。

 その瞬間掴まれていた手が、離れた。

「放課後じゃあ俺、今日予定入っちゃった。
 だから俺は昼休みじゃないと駄目なんだよね」

 ……なんでそんなに笑顔なんですか。

「ならっ、普通に呼びにきて下さい!」

「え? 普通に呼びに来たけど?」


 くっ……。
 確かにそうだ。

 またぷっと笑う。

 ほんと、絶対自分が目立つこと知っていてこんなことするんだから。腹が立つ。

「ま、とりあえず今日はこんなに露骨に嫌な顔されたら俺も気分を害されずにはいられないからね。
 今日のインタビューは延期な」

 
 は、はいーーーー?!

 私は呆気にとられていると踵を返し、すたすたとどこかへ行ってしまった。

 なんだか完全にあっちに飲まれてしまったような気がする。悔しい。