――ふぇ?

 その声に振り返ると北村君だった。

 北村君は見た目はやっぱり派手だから、地味で目立たない私を呼ぶ光景は、みんなの驚きを最高潮にさせたらしく一気に視線が集中する。

「ちょちょちょっ! なんなの奈津、あんなカッコいい人となにちゃっかり知り合ってんの?!」

 興奮気味にバンバンと私の肩を叩くもんだから、私は痛かった。

 でもそんな痛さを感じてる場合じゃない。

 私はとりあえず、北村君に気づかれないよう、顔を隠して弁当を食べる。

 でも実際はご飯なんか飲み込めないままだったけど。

「奈津ならここにいまーす!」

 人一倍声を張り上げたのは、わざわざ言う必要もないけれど菜穂だ。

 馬鹿、と言いたくなったけどそこからは北村君が私の近くまで来たもんだから言えなくなる。

「……なに? これって俺、警戒されてるわけ?」

 私はその声さえも訊く気になれず、手で耳を覆い、顔を机に突っ伏す。

 その姿に北村君はプッと笑う。

「そんな警戒すんなって。
 俺と奈津の関係だろ?」

 意味深な言葉を放つ。
 
 その言葉を否定するために私は振り返ると顔がドアップだった。

「――?!」

 
 あと何センチかでキス出来そうな位置だった。

 あまりの衝撃に硬直。

 北村君は一切驚きしない。眉一つもピクリとも動かさない。かなりの余裕ぶり。