菜穂はやたらじぃっと私を見ていた。

 そしてつまらなそうに

「一之瀬君も、奈津もなんか似た者同士じゃん。
 つまらんっ」

 そう言った。

 でもなにやら皆さん笑いを堪えている。

「こらこら、奈津は本気なんだから笑ったらダメだって」

 そして菜穂がプッと笑い出した途端に、糸が切れたかのようにはははとみんなの笑い声が飛んだ。

 さっきから騒いだり笑ったり、ほんと私たちはみんなから注目浴びっ放し。

 響君も私たちの様子を少し驚いているようにみつめているんですけど。

 その視線を気になりながらも菜穂は笑い続ける。

「ははははっ、ひー、腹痛になるって。
 ほんとあんた等なんかビミョー! でも案外いいカップル? みたいなー!」

 とまたまた懲りずに笑いをこぼす。

 由紀ちゃんは菜穂の気持ちを代弁するかのように「恋愛って凄いね」なんて言ってる。

 
 やっぱ私の恋愛なんて馬鹿にされて当然なのかも知れないけど、私にとっては本当に大きなもの。

 ここ何日間かの私たちは、本当に大きなものだったと私は思いたいのに、そんな風に馬鹿にされるとやけに不安になるじゃんか。

 もうヤケで私は最後のみかんジュースを飲み干す。
 少し咽(むせ)た。

「私は本気だからねっ!」

 その一言に一時は静まり返ったけど、みんなはというと本当に子供を見るような目で私を和やかに見つめていた。

 みんな……案外酷いと思った瞬間、教室の扉が開く。

「中野奈津、いる?」