そう答えるといかにもお笑い芸人が滑るように倒れてゆく、あのリアクションを、菜穂は見事にやってのけた。

「それはないんじゃない?
 ここまで言っておいて……。あたし、こう見えても恋愛経験豊富だよ?」

「ま、いつも重い女として男から嫌われるタイプだけど」

 その澪の毒づいた一言に菜穂は頬を痙攣させながら、私を見ていた。

 こ、怖いんですけど。


「……っで?! 誰よ、お相手は」

 じりじりと詰め寄って私との視線を逸らさない。

 私はあまりにも言い難くてずうっと菜穂と視線を合わせていた。

 すると痺れを切らしたかのように、澪が机をバンッと1回思いっきり叩いた。

「もうここで奈津の恋愛の話は止め止め。
 言いたくないんだから、無理に言わせるのはダメ。
 
 ……でも。
 一番恋愛に疎いのに、マジ恋なんかしてる奈津を放っておく訳にはいかない。

 私たちが知ってる人?」

 なんか結局、結果は菜穂と同じような類の質問に見受けられるのですが……?

 でも名前を言う訳じゃない。

 そう思って「知ってる人」と答えると、なんかまた質問が飛び交って結局私はそれを適当に答える羽目になり、菜穂は勘付いたらしく不敵な笑いを浮かべ、

「一之瀬響君でしょ?」

 と、見事に的中させてしまったのだった……。

 私は肯定も否定もすることが出来ずに、ただただ言葉にならない言葉をみんなに言っていた。

 でも当てられてしまったもんだから、かなりの動揺のしっ放しで、それが肯定してる姿だとみんなに分かられてしまった。
 
 ほんと、つくづく自分の性格は分かり易いと思う。

「まさかあの“空気君”こと一之瀬君が好きだとはねー、ふ~~ん」

 澪はじと~~と私を見つめた。