「まだまだ奈津は恋愛感に掴めてないねー」とだけ由紀ちゃんは言い、悪戯っぽく笑う。

 その返事に不服を感じながらも、私は“みかんジュース”を一気飲みする。

 なんでみかんジュースなのかは、ここの高校の自販機だけでしか売っていないこのみかんジュースが甘みがあってとっても美味しかったから。

 甘党の私を一瞬で惚れさせた。

 初めて飲んだ時のあの衝撃が未だに忘れられず、いっつも朝、購入している。

「いつか奈津は恋愛に溺れるね」

 えっ?!

 その爆弾予言に思わずビクッと体を震わす。

「いい?
 恋愛はね、相手から求められても気安く心を安売りしちゃダメなの。
 ドキドキだとかワクワクだとか……、そんなの漫画だけのハナシ。
  
 男は単純に体だけ。
 特に10代なんて、本能でしか動いてないんだから。

 気持ちなんか入る恋愛なんて20歳を過ぎてから!
 今は恋愛をゲームとして扱わなきゃいけないの。

 おっけ?」

 言い終えたらしく、私を除く2人がその通りだと言わんばかりにパチパチと拍手した。

 私は納得がいかない。

 恋愛は……きっとゲームじゃない。
 気持ちだと思う。

「……高校生でも、ちゃんと見てくれる人だって……いる、と思う」

 その発言にみんなが食いつく。

「もしかしてマジ恋してんのっ?!」

 面白そうに身を乗り出して聞く菜穂に少し驚きながらも、蚊の鳴くような声で「うん」と答えると、由紀ちゃんが食べていたサンドイッチを止めた。

 そして一斉にぇええええぇえぇえ、と今にも教室に穴が開くんじゃないかと言うくらいの声で叫んだ。

「誰? 誰よ?! だれだれだれ……」

「ちょっ、菜穂怖いって。奈津完全引いてるじゃん」

 いや、引いてはないんだけど。
 あまりのみんなの驚きっぷりにびっくりしただけなんですけど。

「――教えたくない」