響君が美術室から帰ってきたのと同時に、チャイムが鳴った。
もうそんな時間? なんて思って教室にある時計を見ると、確かに1時間目の授業の時間。
あんな絵を見てしまったから、すっかりと時間の感覚も抜けてしまっていた。
そして1時間目、2時間目、3時間目、4時間目と淡々と授業は終わっていく中で、私の心はもうなんていうか心ここにあらずって感じだった。
昼休みになり、お互いの机を合わせて昼食タイム。
菜穂と、由紀(ゆき)ちゃんと、澪(みお)と一緒にいつも食べている。
菜穂はやっぱりいつものように恋愛トークへと話を進めた。
「やっぱさー男は、外見じゃない! 性格なの!!」
そう言うと由紀ちゃんがすかさず
「……そんな事言って、どうせまた例のあの人と別れたんでしょ?」
と言う。
そこから菜穂は火がついたかのように
「だってさ!
あの人あたしのメール返してくれなかったの!!
もうそこから喧嘩になちゃってさ。
みみっちい事で怒るなとかって、酷くない?!」
私に同意を求めるかのように目が合う。
私は苦笑いをしながら「そうだね……」と答えるけれど、実際は全然理解してなかった。
「恋愛なんかどうでもいいじゃん。
ドラマとかでの架空恋愛してるほうがよっぽどマシ。
リアルの恋愛話よりも、架空の恋愛」
そう言うのは澪。
澪のお母さんは恋愛小説家だけあって、言う事に深みがある。
さらに澪は言葉を続ける。
「恋愛なんてゲームでしょ?
自分が恋愛なんかに心を奪われたら、それで終わり。
本気の恋なんて知った時点でもう終わり」
え、えっと……?
言ってることは筋が通ってる気もしないけれど、私ははてなマークでいっぱいだった。
「じゃあ恋愛って何?」
私の問いかけにみんな一斉に火が消えたかのように白けた。