「本番ー!3、2……」
私は恋次を邪魔する役なので、とりあえず主役とヒロインの場面の撮影が始まった
自分の出番が来るまで楽屋には戻らずに二人の演技を見ていた
紗保さんの演技は、とてもうまかった
ついこの前、女優の変更があったばかりなのに。私よりも全然、練習してない筈なのに…
演技はとても自然で…正直、見入ってしまう自分が居た
『好き…本気で好き!』
まるで本心の様な感情の篭った演技。
そのセリフ、誰を想像しながら言っているの?
円衣裕太を思い浮かべながら言ってるんじゃないの?
私には、そう聞こえる
「カーーット!
すっごくいい!紗保さん、初ドラマとは思えませんね」
紗「ありがとうございまーす」
そんな監督と紗保さんのやりとりを見ていた
「じゃあ次は主役と瑞乃さんの役が中学校ぶりに再開するシーンを撮るのでお願いします!」
佐「美織、深呼吸!」
ずっと隣に居た佐々木に言われ、深く深呼吸をした。
紗保さんよりも、いい演技を…
「じゃあ本番ー!3、2……」
『たかし…?!わぁ…やっぱり
たかしだ!久しぶり~元気そうでよかった。今何してるの?』
『今、仕事休憩時間で昼飯行こうとしてて』
『そうなの?私も丁度お昼にしようと思ってたの…一緒に食べない?』
『あ、あぁ…いいよ。行こうか』
「カット!二人とも良いよ!
主役のちょっと困る感じも、瑞乃さんのグイグイ行く感じも奪ってやろうってのが伝わってきます」
初演技…正直、心臓はバックバク、手汗なんてびしょびしょだった
これでいいかな?
うまくできてるかな?って、不安はあったけど褒められた事でこれが私の演技だ。私はこれでいいんだって自信に変わっていった
それからは緊張しつつも、楽しく撮影する事が出来た
練習したせいもあってか、1度もセリフを噛む事もなく自分の思う様に出来たと思う
「お疲れ様でした!本日は以上です」