「おはようございまーす!」スタジオに入ると中のスタッフが一斉に挨拶してきた。
「よろしくお願いします。」セットに近寄ると、そこには既に主役の俳優と紗保さんがいた。
紗保さんと目が合う
鋭い目つきはまるで睨まれているかのような…ギラキラと私に闘争心を剥き出しにしてきた
美「おはようございます。
共演、宜しくお願いします」
軽く挨拶を済ませると、主役の俳優はマネージャーに呼ばれてどこかに行ってしまった
紗保さんと二人になった事で、気まずい空気が間に流れる
紗「久しぶりね。」
口を開いたのは紗保さんの方だ。相変わらず、強い口調に気の強さが滲みでている。
美「そうですね…
食事会以来でしたっけ?」
紗「あの時は地味で暗かったのにどうして急にこんなに売れたのかしら?まさかあなた、食事会の後に何処かのお偉い様に枕営業したんじゃないの?」
紗保さんが馬鹿にしたように笑いかけてくる
美「…残念ながら枕営業なんてしてません。すみません、実力でここまで来ちゃって。
紗保さんこそ、モデルだったのにどういう伝で芸能界に?それこそ…どっかのお偉い様と枕営業でもしたんじゃないんですか?」
紗「あんた…モデル出身だからって、馬鹿にしてんじゃないわよ。」
紗保さんの言葉に、もう、うじうじ泣いていたあの頃の私は居ない
だって私もやっと、花畑の華になったんだから…
誰よりも美しく輝く華になるために、周りはただの花にしなきゃいけない。
私が花に戻るわけにはいかない
美「…あの頃の瑞乃美織はもう居ません」
紗「…ふん。まだ昔の方が可愛げあったじゃない…
でもね、大口叩けるのも今のうちだから。このドラマで、アンタよりも私の方が上って思い知らせてあげる」
美「……受けて立ちます」
「そろそろ本番行きまーす」監督の掛け声でスタッフが一斉に配置につく。睨み合っていた視線を外したのは、私の方だ
まだ強い視線を感じる紗保さんを残し、私の出番が来るのを待った