富「金に溺れて野心も無くした。
近づく女を疑い、本気で惚れた女まで突き放した
そいつの泣き顔は、今でも忘れられない
どこか、美織に似てたんだ…。
俺はその女に対する償いや…罪悪感から逃れたいが為に、美織に良くしてきたのかもしれない。最低な男だろ?」
チラッと私の顔を見た富田は続ける
富「東京タワーを見下ろす生活をしていたらその内、スカイツリーが出来た。
日に日に大きくなるスカイツリーを見て俺は焦った
まるで自分が東京タワーにでもなったつもりだったのかな…
一番高いのに…誰よりも高いところから見上げてるのに…抜かされる、新しい奴に抜かされる。ってな
スカイツリーが出来上がった時は落胆したよ。東京タワーよりも高いんだから…
東京ってこういう街なんだよな
美織の言うようにビルが壊されては、新しいビルが出来上がる
人だってそう。時代だって何もかもが目まぐるしく嫌になる程、速いスピードで回る…
疲れてた時に、美織に会って…思い出したんだ。
ここで全てを見下ろしてるのはつまらない。退屈だ…
上から見下ろす東京タワーよりも、下から見上げる東京タワーの方がずっと力強くて綺麗なんだ 」
私は東京タワーに目をやった
美「…下から見上げる東京タワー」
富「何が言いたいかって言うと、平凡が一番なんだよ。空気と同じで高ければ高い程、愛が薄いんだよ
ここは愛が薄い、2人で下に降りないか?
貧乏でも平凡でも、愛が沢山ある生活が幸せでないわけがない。」
私は富田の手を握った
何故だか、富田の話に涙している自分がいた