父「あいつ、片付けもしないまま帰りやがって、次の日バツが悪そうに戻って来たから汚れてない場所まで掃除させてやったよ」
オヤジさんはそこで満足して話を終わらせようとしたので、私から訊いた
美「それで…その後は?」
父「あぁ…えーっと、今度は俳優辞めたいって言い出して。刺された事が、相当ショックだったみたいでな
辞めたきゃ辞めればいい。無理してそこに居続ける理由はなんだ。って訊いたんだ」
美「…そしたら?」
父「…そしたらあいつ、俺が前を歩いていないと…ってわけわかんない事言ってたな。」
前を歩く…
私が円衣裕太を追い続ける為に?
美「……。」
父「だけどやっぱり自分の中でもう芸能界でやっていく自信も無かったんだろう。
美織ちゃんとも別れて…
どんな風の吹き回しか今度は、このラーメン屋を継ぎたいって言うんだよ
なんだよ気持ち悪りぃーな。と思って理由を訊いたんだ。お前、この店継いだ瞬間潰して俺に復讐する気だろ?って」
美「…それで理由は?なんて?」
父「なんでも…忙しい仕事の後に食べたくなった人が居たとして…その時に親父が死んでたらどうするんだって言うから、俺はまだまだ死なないってそこでまた喧嘩になって…」
" 忙しい仕事の後に食べたくなる"
私が初めてオヤジさんのラーメンを食べた時に言った言葉だった。
私はボロボロとその場で泣いた。
オヤジさんはわかってるのか、わかってないのか。何も言わずにウンウンと頷いていた
美「あの…お父さん。
本当にありがとうございました」
私は涙を拭き、ニッコリと笑いかけるオヤジさんの目を見て言った
美「…裕太さんは、今何処に?」