美「ご馳走様でした…美味しかった」



父「変わってないだろう?」




そう言ったオヤジさんは、白髪とシワが増えて笑うと更に優しそうな顔になっていた。

歳を取るってこういう事なのかな




美「はい…あの日に戻ったようでした。全然変わってない味で…」




オヤジさんは満足したようにタバコに火をつけた




美「…ここに来るのが遅くなってしまってすみません。謝らなくてはいけないのに…怖くて逃げてました
裕太さんの事、本当に申し訳ありませんでした」




私はその場に立つと深く頭を下げのをオヤジさんは焦って止めた



美「おいおい!何してるんだよ
やめてくれよ美織ちゃん
裕太が俳優を辞めた事を言ってるのか?それならあれは、裕太が決めた事だし。
刺されたのだって、あいつの日頃の行いが悪かったからだろ。くらいに思っとけば良いんだよ~

俺はあいつが刺された時、ガッツポーズして大笑いしてやったぜ!!」




オヤジさんの冗談も昔と変わっていなかった




美「…裕太さんは、生きてるんですよね?」




勢い良く顔をあげて訊いた私に、一瞬驚いた後オヤジさんは豪快に笑った




父「ワハハハハハ!俺でも流石に裕太を殺しはしなかったぞ美織ちゃん。勿論、裕太は生きてる」




その言葉を聞いた私は、倒れ込むように椅子に座ると深い息を吐いた




美「良かった……
本当に良かった………」



父「なんだよ美織ちゃん、この何年もの間ずっと、裕太が生きてるかもわからなかったってのか?」



美「…お恥ずかしい話ですが…裕太さんが引退した日からなんの連絡も来ていませんでしたので…
その前にも、いろいろありまして裕太さんとは別れたので…」




父「あぁ、そういやあいつここに来てその事を言ってたよ。
美織に騙されてたーってメソメソラーメン食ってるからよ、俺、言ってやったんだ

お前本気で美織ちゃんを疑ってんのか!ってな
そしたら親父に何がわかるんだーってここで大ゲンカ!テーブルはひっくり返るわお皿は割るわで最悪だったよ」




私はその光景を、鮮明に想像する事が出来た