気付くといつの間にか寝てしまっていた様だ。
リビングに行くと富田の姿はなかった
きっと仕事だろう……
私は気分転換にシャワーを浴びると予定も無しに外に出た
「美織様、お出掛けですか?
どちらまで?」
富田が私用に付けてくれた白い手袋をした運転手が訊いてくる
美「んー……」
ーーーーーーー
私は吸い寄せられる様に、ある場所に来ていた。
ここに来るのも10年振り…
懐かしい音のするドアを開け、私はカウンターに座った。
お客は私以外には居ない
美「…ラーメンひとつ…」
ラーメンは直ぐに出てきた
ユラユラと湯気が踊るラーメンの隣に、トンっと炒飯が置かれた。
父「可愛い子にはサービス」
そう言って笑ったのは円衣裕太のお父さん…オヤジさんだった。
父「…よく来たね。何年ぶりだ?随分といい女になって…」
美「…ご無沙汰しております。
もう、10年になりますかね」
父「そうかそうか…本当に、よく来てくれたな」
オヤジさんはあの頃のまま、ニッコリと私に笑いかけた
美「…あの…私…ッ」
父「まぁまぁ話は後で。ラーメンが伸びちゃうから、食べな」
私は言い掛けた言葉を飲み込みラーメンを啜った。
美味しい…
あの頃と何一つ変わってないあの味のままだった。
私は泣きながらオヤジさんのラーメンを食べた
オヤジさんは私が食べ終わるまで暖かい眼差しで見つめていた