65階からの景色は…この10年間の間で何度も何度も変化をした。

建物は壊され、また新しい建物が建つ

この街の人間も同じ。入れ替わり、勝ち残ったものだけが生き残る



ガラスに手を当て、東京の街を見下ろした




富「何見てるの?」




話し掛けてきたのは富田だ




美「…見てあそこ。今度はあのビルが壊されるみたい」




私は指を指して富田に教えた




富「見えないよ。ここ65階だよ?
美織は目が良すぎるの、普通なら見えないからね」




富田は笑いながら言った

そうなのかな…そう思いながら崩されていくビルに目を戻した。




富「…前に話した事、覚えてる?
金持ちの臆病者と、愛を沢山持ってる貧乏人。
どっちが幸せかってやつ」



美「うん…よく覚えてたね」



富「美織こそ。」



美「それで?
その話がどうかしたの?」



富「答えは決まったかなって…」



美「決まらないよ。私は、愛もお金も同じ天秤にかける事は出来ない人間だから。」



富「…そうか。やっぱり何年経ってもわからないままだよな」



美「どうしたの?いきなり?
なんか富田さん変だよ」




私は富田に笑いかけた





富「…美織、もう、終わりにしないか。」



美「…なにを?」



富「探しにいけ。円衣裕太の事」



美「……なにを…言ってるの?今更そんな…」



富「美織はもう充分苦しんだ…もういいじゃないか。」




美「………まだ、足りない」



まだ、足りない。?

私は何を言っているの?
私は一体……なにを?


なんで、涙が?